PICO OS 6とProject Swarm発表──PICO Developer Special Eventの技術的ポイントを解説
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PICO OS 6とProject Swarm発表──PICO Developer Special Eventの技術的ポイントを解説

PICOが発表した次世代OS「PICO OS 6」の空間コンピューティングアーキテクチャ、開発者向けSDK、そして40 PPD・カスタムXRチップ搭載の新型ヘッドセット「Project Swarm」の技術仕様を詳しく解説します。

2015年の創業から10年、10機種のXRヘッドセットと5世代のOSを送り出してきたPICOが「PICO Developer Special Event」を開催しました。次世代OS「PICO OS 6」と新型フラッグシップデバイス「Project Swarm」(コードネーム)が発表され、XR開発者向けの技術的アップデートが多数含まれています。

本記事では、発表内容の中から特に開発者視点で重要な技術ポイントを整理します。

PICO OS 6:空間コンピューティングOSへの進化

PICO OS 6は「効率性(Efficiency)」「直感性(Intuition)」「開放性(Openness)」の3つの設計原則に基づいて構築されています。

PICO Spatial Engine:OSレベルの統合レンダリング

PICO OS 6の中核となるのが「PICO Spatial Engine」です。従来はアプリ単位で独立していたレンダリングパイプラインを、OSレベルの統合アーキテクチャに移行しています。

これにより実現するのが真の空間マルチタスクです。3Dのテーブルトップゲームをプレイしながら、2Dのブラウザやアプリを空中に配置して同時操作できます。2Dと3D、仮想と現実がシームレスに融合する環境が、OS標準として提供されます。

入力システム:マルチモーダル対応

入力面では、視線追跡とハンドトラッキングを組み合わせた「ルック&ピンチ」操作に対応しました。コントローラー、モーショントラッカー、マウス、キーボードといった既存の入力デバイスもシームレスに利用できます。

Cloud Crystalデザイン言語

新しいデザイン言語「Cloud Crystal」を採用しています。部屋の照明環境に応じてUIのライティングがリアルタイムに変化し、現実世界に自然に溶け込む質感を実現しています。テキストの可読性も改善されています。

エコシステムの開放性

PICO OS 6は以下のエコシステムをサポートします。

  • OpenXR ── 業界標準のXRランタイム
  • WebXR ── ブラウザベースのXR体験
  • Android ── Androidアプリの実行
  • PCVR ── PC接続によるVR体験

過去のPICO向けVRゲームとの完全な後方互換性も維持されています。

開発者向けツールとSDK

PICO Spatial SDK

空間アプリ開発向けの新SDKが発表されました。

  • 言語: Kotlin
  • UIフレームワーク: 宣言型UI(Jetpack Compose系)
  • 開発環境: Android Studio向けプラグイン・エディタを提供

Android開発者にとって馴染みのある技術スタックで空間アプリを構築できるのが特徴です。

Web Spatial:Webベースの空間アプリ開発

特筆したいのはWeb Spatialフレームワークです。HTML、CSS、Reactといった既存のWeb技術を使って空間アプリを開発できるオープンソースフレームワークとして提供されます。

重要なポイントとして、Web SpatialはPICO OS専用ではなく、以下のプラットフォームでも動作します。

  • Vision OS(Apple Vision Pro)
  • Android XR
  • その他のXRプラットフォーム

WebXR開発者にとっては、既存のスキルセットを活かしながらクロスプラットフォームの空間アプリを構築できる選択肢が増えたことになります。

ゲームエンジンサポート

Unity、Unreal Engine、OpenXRの継続サポートが確認されました。PICO OS 6の空間マルチタスク環境では、他のアプリと共存可能なMRゲームの構築が可能です。

Project Swarm:次世代フラッグシップの技術仕様

2026年のグローバル発売を目指して開発中の新型デバイス「Project Swarm」(コードネーム)がプレビューされました。

ディスプレイ:40 PPDの高解像度

項目Project Swarm従来のヘッドセット
PPD(Pixels Per Degree)40 PPD20 PPD以下
ディスプレイカスタムマイクロOLEDLCD / OLED
画素密度約4,000 PPI──

4,000 PPIはスマートフォンの約9倍の画素密度に相当し、物理モニターの代替として実用的な鮮明さを実現するとしています。

デュアルチップアーキテクチャ

Project Swarmの最大の技術的特徴は、2つのチップを組み合わせた独自設計です。

カスタムXRチップ

PICOが独自設計したシリコンで、センサー処理からディスプレイ出力までのレイテンシを12ミリ秒まで短縮します。これにより、現実と見紛うほどの高品質なパススルー(MR)体験を実現するとしています。

フラッグシップSoC

現行のSnapdragon XR2 Gen 2と比較して、CPUおよびGPU性能が2倍以上と発表されています。デュアル4K映像の処理を担います。

レイテンシ12msの意味

パススルーMRにおいて、センサーからディスプレイまでのレイテンシは体験品質を左右する重要な指標です。12msという数値は、現行デバイスと比較して改善されており、現実世界の映像がほぼリアルタイムで表示されることを意味します。

開発者向け早期アクセスプログラム

PICO Global Early Access Programの募集が開始されています。PICO公式サイトの日本語ページ(picoxr.com/jp)から「Apply for PICO Global Early Access」ボタンを押すと、Lark Office上のアンケートフォームに遷移して応募できます。

応募フォームの内容

応募フォーム(Lark Office)では、以下のような情報が求められています。

基本情報:

  • 氏名・メールアドレス
  • 所属組織・チーム名
  • 国・地域

開発経験:

  • XR開発の経験年数
  • 使用しているゲームエンジン(Unity、Unreal Engine等)
  • 過去にリリースしたXRアプリケーション
  • 対応プラットフォーム(PICO、Meta Quest、Apple Vision Pro等)

テストへの関心:

  • 早期アクセスで特に関心のある領域(ハードウェア、OS、SDK等)
  • テストに割ける時間やリソース
  • フィードバック提供の意思

PICOが求めている開発者像

フォームの質問内容から、PICOが以下のような開発者・チームを求めていることがわかります。

  • 実績のあるXR開発チーム ── 既にVR/MRアプリをリリースした経験があること
  • クロスプラットフォーム開発者 ── 複数のXRプラットフォームでの開発経験
  • 技術的フィードバックができる人材 ── ハードウェアとソフトウェアの両面で具体的なフィードバックを提供できること
  • PICO OS 6のエコシステム構築に貢献できるチーム ── 新OSの空間コンピューティング機能を活かしたアプリ開発に意欲的であること

このプログラムは一般ユーザー向けではなく、専門知識を持つ開発者向けのクローズドベータです。選考を経て参加者が決定されます。

XR開発者への影響

今回の発表のポイントをまとめます。

  1. Web Spatialの登場 ── Web技術で空間アプリを構築でき、かつクロスプラットフォーム対応。WebXR開発者にとって新たな選択肢
  2. OpenXR / WebXRの継続サポート ── 標準技術ベースの開発が引き続き有効
  3. OSレベルの空間マルチタスク ── アプリが他のアプリと共存する前提での設計が必要に
  4. 40 PPD / 12ms レイテンシ ── テキスト表示やMR体験の品質向上により、新しいユースケースが開ける可能性
  5. デュアルチップ設計 ── 専用XRチップ+汎用SoCの組み合わせというアーキテクチャは、今後のXRデバイス設計のトレンドになる可能性

出典

BANGEO XR

この記事を書いた人

BANGEO XR

WebXRの技術情報を日本語でまとめているチームです。デモやガイドを公開しています。

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